私たちは日々、家庭や職場、地域社会などでさまざまな人と関わりながら生活しています。
こうした人間関係を円滑に保つためには、相手の立場を理解し、
自分の考えを適切に伝え、状況に応じて柔軟に行動する
「ソーシャルスキル」が欠かせません。
結果では、これらのスキルを総合的に評価し、
実生活に活かすための具体的なヒントを提示します。
自分の対人スキルを客観的に見直す機会として、ぜひお試しください。
・SSRS/SSIS(Gresham & Elliott)
学齢児から成人までを対象に、協力、自己主張、責任、自己統制、共感、関与、コミュニケーションなどを多面的に評価。学校・家庭・本人評定を組み合わせられる実務向け尺度。
・ICQ(Interpersonal Competence Questionnaire:Buhrmester ほか)
関係開始、否定的主張、自己開示、情緒的支援、葛藤管理の5領域で対人有能さを測定。青年〜成人の自己評定で広く利用。
・SSI(Social Skills Inventory:Riggio)
情動表出・感受・統制、社会的表出・感受・統制の6因子構成。感情的スキルと社会的スキルを統合的に把握できる点が特徴。
・MESSY(Matson Evaluation of Social Skills with Youngsters:Matson ほか)
児童・思春期の社会的に適応的/不適応的行動を包括的に評価。介入計画やトレーニング効果の測定に用いられる。
・KiSS-18(菊池)
日本語圏で広く用いられる短縮版。日常生活での対人行動を簡便にスクリーニングでき、学校教育や社会人研修にも適している。
【尺度作成の意義】
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は教育・医療・企業研修などに徐々に広がっている一方で、効果を測定するための尺度は、学術研究を前提とした専門的な内容が多く、現場での実用性に乏しいという課題があります。
そのため、より実際的で理解しやすく、日常的な対人行動の変化を可視化できる新たな評価尺度が求められています。
本診断は、既存の理論的基盤を踏まえつつ、実生活における「協力」「主張」「共感」「調整」といった行動的スキルを中心に構成し、教育・臨床・ビジネスなど幅広い現場での活用を目指しています。
上記論文の調査後、それぞれの測定項目について、公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業した者が中心となり、検討を加え質問項目を精査しました。設定した6因子についてそれぞれ4つの質問を設定し、合計24問の尺度としています。
1. ラポール形成力(Rapport Building)
・相手と自然に会話を始められる
・初対面でも緊張せず話しかけられる
・相手の表情を見て話題を合わせる
・共通点を見つけて会話を広げられる
2. 共感理解力(Empathic Understanding)
・相手の気持ちを想像しながら聞ける
・表情や声から相手の感情を察する
・相手の気持ちを言葉で確認できる
・相手の立場に立って考えられる
3. アサーション力(Assertive Expression)
・自分の意見を落ち着いて伝えられる
・嫌なことを断ることができる
・頼みごとを丁寧に伝えることができる
・自分の気持ちを素直に表現できる
4. 協調行動力(Cooperative Behavior)
・相手の意見を尊重して話し合える
・衝突が起きても冷静に対応できる
・相手の立場を考えて譲ることができる
・チームで協力して行動できる
5. 対人調整力(Social Adaptability)
・相手の性格に合わせて話し方を変える
・場の雰囲気を読んで行動を調整できる
・相手の反応に合わせて説明を変える
・その場に合った言葉づかいができる
6. 感情調整力(Emotional Regulation)
・緊張しても落ち着いて話すことができる
・怒っても感情的にならずに話せる
・失敗しても気持ちを切り替えられる
・不安な時も冷静に考えられる
・回答方式
各質問は次の5件法で回答します。
全く当てはまらない 0点
あまり当てはまらない 1点
どちらともいえない 2点
やや当てはまる 3点
よく当てはまる 4点
・下位因子の基準
各因子は4問で構成されています。
各因子の合計点は 0〜16点 となります。
高 13〜16点 高い
中 9〜12点 中程度
低 0〜8点 低い
・総合的な基準
(最大96点・最小0点)
平均55点・標準偏差約12点を想定した25%区分
ソーシャルスキル かなり高い 64~96点
ソーシャルスキル やや高い 55~63点
ソーシャルスキル やや低い 47~54点
ソーシャルスキル かなり低い 0~46点
診断結果は、得点タイプごとに特徴と注意点を1000文字前後でまとめた。内容は先行研究で示された理論的知見と、作成者の臨床経験を基に作成している。結果は個人の自己理解とスキル改善のための教育的示唆として提供しています。
当診断は学術研究用の尺度ではない。本診断は、臨床家と専門家の知見および先行研究をもとに、実用的なコミュニケーション改善のヒントを提供する目的で作成されたものです。
本診断は、因子構造の統計的検証、信頼性係数、および妥当性の確認といった心理測定学的検証を実施していません。そのため、統計的根拠は限定的であり、学術研究に使用することは推奨されません。診断結果は個人の自己理解と教育的フィードバックの参考情報としてのみご活用ください。
Gresham, F. M., & Elliott, S. N. (1990). Social Skills Rating System.
Gresham, F. M., & Elliott, S. N. (2008). Social Skills Improvement System.
Buhrmester, D. et al. (1988). Interpersonal competence in peer relationships. Journal of Personality and Social Psychology.
Riggio, R. E. (1986). Assessment of social skills. Journal of Personality and Social Psychology.
Matson, J. L. et al. (1983). MESSY: Matson Evaluation of Social Skills with Youngsters. Behavior Research and Therapy.
菊池章夫(1994)『ソーシャル・スキル教育の理論と実際』金子書房.