仕事、友達、家族、コミュニケーション能力は日々の生活を充実させるための大切な土台です。だからこそ、自分のコミュニケーション能力がどのくらいあるのか、客観的に知ることはとても役立ちます。
この診断では、実生活で役立つ10の視点から、コミュニケーション能力を多角的に測定できるように作られています。作成者は公認心理師、弁護士、経営者が協力しました。
【測定する10の項目】
①環境指数
②対人不安の少なさ
③自己肯定感
④他者肯定感
⑤傾聴力
⑥発話力
⑦主張力(アサーション力)
⑧非言語力
⑨論理的な説明
⑩説得力
コミュニケーション能力診断」は、単なる直感や経験だけでなく、コミュニケーション学、心理学、教育学、ビジネス分野における長年の研究や知見を参考に設計されています。
現代社会で求められる多様なコミュニケーション能力を測るため、各分野の専門家で協議をした上で、以下の4つの視点を重視し、項目を考案しました。
・環境調整力
人との繋がりを広げ、活かす力
・心理的安定性
コミュニケーションを支える心の土台
・人間関係スキル
日々の交流を豊かにする能力
・ビジネスコミュニケーションスキル
成果を出すための実践力
これらの視点は、コミュニケーションが個人のスキル、心の状態、活動環境によって左右され、現代社会ではビジネスで成果を出す力も不可欠であるという考えに基づいています。
4つの視点に基づき、それぞれの先行研究を調査しました。
1. 環境調整力
コミュニケーションには、自ら環境を整え、人との繋がりを広げる力が不可欠です。Wiemann (1977) [4] が開発した**Communicative Competence Scale (CCS)は、状況に応じたコミュニケーションの適合性(appropriateness)を重視します。これは、環境を調整し、人との繋がりを広げる能力に通じます。
2. 心理的安定性
円滑なコミュニケーションには、自己と他者への肯定的な心の状態が不可欠です。
対人不安の少なさ: 対人不安が高いと、社交場面を避けがちです。**Social Interaction Anxiety Scale (SIAS)やLiebowitz Social Anxiety Scale (LSAS)**といった尺度は、こうした不安を測定し、その影響を明らかにしています [5]。
自己肯定感・他者受容力: 孤独感を測るUCLA Loneliness Scale [6] は、孤独感が高いほど対人関係の満足度が低いことを示唆します。これは、自己と他者への肯定的な姿勢が良好な関係構築に不可欠であることを意味します。
3. 人間関係スキル
人との日々の交流を豊かにする具体的なスキルは、良好な人間関係構築の中心です。
傾聴力・発話力: シャノンとウィーバーのモデル (1949) [1] は、情報の正確な伝達が重要であることを示しました。また、大城賢 (2008) [7] のモデルが示す「言葉の正確さ」や「状況に応じた言葉選び」は、効果的な発話の基礎です。
主張力(アサーション力): アーガイル (1981) [2] のソーシャルスキルは、特定の対人目的達成のための行動的技能群です。Japanese Assertion Inventory (JAI) [5] などは、自己主張の適切さを測ります。
非言語表現力: 大城賢の「方略的能力」が示すように、非言語的な表現も重要です [7]。
Interpersonal Communication Competence Scale (ICCS) [3] は、自己開示、共感性、アサーティブネス、相互作用管理など、関係性の維持・発展に焦点を当てます。
4. ビジネスコミュニケーションスキル
現代社会、特にビジネスシーンでは、明確な目標達成に向けた効果的なコミュニケーションが不可欠です。
論理的思考力・説得力: 経済産業省の社会人基礎力 (2013) [8] は、「働きかけ力」「発信力」を挙げ、論理的に考え、相手を納得させる力がビジネスで重要であることを示唆します。
まとめ
この診断は、「環境調整力」「心理的安定性」「人間関係スキル」「ビジネスコミュニケーションスキル」という4つの主要カテゴリ、計10の因子に体系化しました。様々な先行研究や既存の尺度の知見を統合し、あなたのコミュニケーションスタイルを多角的に理解し、具体的な強みや成長ポイントを見つけるための実践的なツールとして、ぜひご活用ください。
公認心理師、弁護士、経営者が中心となり、検討を加えたうえで質問項目を精査しました。また短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ3つの項目を採用しました。
【環境調整力】
1.毎日顔を合わせて会話をしている
2.困った時に相談できる人がいる
3.複数のコミュニティに所属している
【心理的安定性:対人不安の少なさ】
4. 緊張せず会話ができる
5. 周りの評価は気にならない
6. 社交的な場面は回避しない
【心理的安定性:自己肯定感】
7. 自分の意見には価値がある
8. 必要以上に自分を卑下しない
9. 自分には長所がたくさんある
【心理的安定性:他者肯定感】
10. 意見が違っても相手を尊重する
11. 人の良い点を見つけるのが得意だ
12. 根本的には人を信用している
【人間関係スキル:傾聴力】
13. 相手の発言を繰り返して確認する
14. 積極的に質問をする
15. 相手の発言を肯定的に返す
【人間関係スキル:発話力】
16. 積極的に自己開示をする
17. 自分から話題を提供する
18. 場を和ませる話ができる
【人間関係スキル:主張力(アサーション力)】
19. 不快なことは我慢せず主張する
20. 主張をするときは柔らかく伝える
21. 対立した時は建設的に話し合う
【人間関係スキル:非言語】
22. 表情や声の抑揚が豊かである
23. 会話をするときによく目が合う
24. 相手の表情や抑揚に注目する
【ビジネスコミュニケーションスキル:論理的な説明力】
25. 物事を順序立てて説明する
26. 理由や根拠を示しながら説明する
27. 簡潔にわかりやすく伝える
【ビジネスコミュニケーションスキル:説得力】
28. 熱意をもって考えを伝える
29. 興味を引く話し方ができる
30. 魅力的なプレゼンができる
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください。
[1] Shannon, C. E., & Weaver, W. (1949). A mathematical theory of communication. Urbana, IL: University of Illinois Press.
[2] Argyle, M. (1981). Social competence and mental health.
[3] Coomer, P. (n.d.). Interpersonal Communication Competence Scale. Retrieved from https://paulcoomer.com/?page_id=428 (Rubin, 1982を引用)
[4] Wiemann, J. M. (1977). A communicative competence scale. Human Communication Research, 3(3), 195-204.
[5] 相川充, 藤田正美 (2005). 成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成. 東京学芸大学紀要 第1部門, 56, 87-93.
[6] 諸井克英 (1991). 改訂UCLA孤独感尺度の次元性の検討. 人文論集 静岡大学人文学部, 42, 23-51.
[7] 松川禮子, 大城賢 (2008). 『小学校外国語活動実践マニュアル』. 旺文社.
[8] 経済産業省 (2013). 「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料. [PowerPointファイル] https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/kisoryoku_PR.pptx