出来事そのものではなく「どう受け取るか」という思考のくせによって、
現実をネガティブに解釈してしまう傾向のことを指します。
落ち込みや不安、対人関係のつまずきに影響することがあります。
① 白黒思考(全か無)
物事を0か100で判断し、中間を受け入れにくい状態です。
② 過度の一般化
一度の失敗や出来事を「いつもそうだ」と広げて捉える傾向です。
③ 選択的知覚(悪い面に注目)
良い点よりも欠点や不安材料に目が向きやすい状態です。
④ ポジティブ否定
成果や称賛を「たまたま」と受け取り、良い面を認めにくい状態です。
⑤ 心の読みすぎ癖
根拠が弱いのに「嫌われた」「批判された」と決めつける傾向です。
⑥ 拡大・縮小
失敗を大きく、成功を小さく評価してしまう傾向です。
⑦ 感情的決めつけ
「不安=危険」など、感情を事実と混同しやすい状態です。
⑧ 「〜すべき」思考
厳しいルールで自分や他者を縛り、柔軟さを失いやすい傾向です。
⑨ ラベリング
一度の出来事で自分や他者にレッテルを貼ってしまう傾向です。
⑩ 自己関連づけ
周囲の出来事を過剰に自分の責任と結びつける傾向です。
「認知の歪み」とは、ものごとを実際よりもネガティブに受け取ってしまう思考のくせのことをいいます。この考え方は、心理学者アーロン・ベックが1970年代に提唱した「認知療法」がもとになっています[1]。その後、精神科医デイヴィッド・バーンズが一般の人にもわかりやすい形で整理し、「10種類の認知の歪み」として紹介しました[2]。この10パターンは、心理学やカウンセリングの分野で最もよく使われる分類のひとつです。
バーンズが示した代表的な10の歪みには、次のようなものがあります。
1. 白黒思考(全か無か思考で考える)
2. 過度の一般化(1度の失敗を「いつも失敗する」と思う)
3. 選択的知覚(悪いことばかりに注目する)
4. ポジティブの否定(良いことを素直に受け取れない)
5. 心の読みすぎ癖(根拠なく悪い結果を決めつける)
*結論の飛躍は、予言の誤りも通常対象としますが、過度の一般化と被る部分もあるため、心の読みすぎに限定しました。
6. 拡大・縮小(失敗を大げさに、成功を小さく考える)
7. 感情的決めつけ(気分=事実と思い込む)
8. 「〜すべき」思考(自分や他人に厳しいルールを課す)
9. ラベリング(自分や他人に悪いレッテルを貼る)
10. 自己関連づけ(何でも自分と関連付ける)
これらは現在でも、認知行動療法(CBT)の現場やメンタルヘルス教育で広く使われています。たとえば、バーンズの理論をもとにした「Cognitive Distortions Scale(CDS)」という尺度では、この10パターンを使って思考の傾向を測定しています[3]。また、日本でも大学生や社会人を対象にした研究で、認知の歪みがストレスや落ち込みとどのように関係しているかが調べられています[4]。
本診断でも、この10パターン版の枠組みを採用します。その理由は3つあります。
第一に、心理療法の理論と一致しており、科学的に整理された枠組みであること。
第二に、一般の人にも理解しやすく、日常の思考グセを振り返るのに役立つこと。
第三に、10パターンそれぞれが「自分の思考の特徴」を見つめる手がかりになることです。
本診断では、これら10の歪みについて質問項目を作成し、日常の考え方のくせをやさしくチェックできる内容にしていきます。これにより、自分の思考の傾向を理解し、より柔軟で前向きな考え方を育てるきっかけとなることを目指します。
公認心理師、臨床心理士、心理学の大学院を卒業したものが中心となり、先行研究を検討し、複数の素案を作成しました。比較的短時間で診断が終わり、結果を把握できるようにするため、それぞれ3つの項目を採用しました。
①白黒思考(全か無でしか考えない)
1 結果が出ないと努力が無駄に思える
2 すぐに人間関係をリセットしたくなる
3 曖昧な状況だと白黒つけたくなる
②過度の一般化(1回の失敗を広げる)
4 一度の失敗で自信をなくしてしまう
5 嫌われたら次も嫌われると思う
6 ミスすると今後も失敗すると感じる
③選択的知覚(悪い面ばかり見る)
7 良いことより悪いことが気になる
8 短所を見つけ相手を嫌いになる
9 一つの失敗を何度も思い出す
④ポジティブ否定(良い面を認めない)
10 成功してもたまたまだと思う
11 褒められても素直に喜べない
12 良い評価を信じられない
⑤心の読みすぎ癖(根拠なく決めつける)
13 周りが自分を悪く評価している気がする
14 何かと批判された気がしてしまう
15 相手の気持ちを考えすぎて疲れる
⑥拡大・縮小(失敗を大きく成功を小さく)
16 自分の欠点を大きく考えてしまう
17 うまくいっても大したことないと思う
18 人の成功はすごく見える
⑦感情的決めつけ(気分=事実と思う)
19 不安なときは悪いことが起きると考える
20 落ち込むと自分はダメだと感じる
21 気分が悪いと現実も悪く見える
⑧「〜すべき」思考(厳しいルール)
22 失敗してはいけないと思う
23 絶対、すべき、という言葉をよく使う
24 常に努力すべきだと思う
⑨ラベリング(自分や他人にレッテルを貼る)
25 失敗すると「自分はだめな人間だ」と思う
26 他人を「〇〇な人」と大雑把に決めつける
27 一度の行動で人を判断してしまう
⑩自己関連づけ(何でも自分と結びつける)
28 他人の問題も自分が直さなければと感じる
29 他人の機嫌が悪いと自分のせいだと感じる
30 周りに問題が起こるのは自分のせいだと思う
【回答方式】
各質問は次の5件法で回答します。
全く当てはまらない 0点
あまり当てはまらない 1点
どちらともいえない 2点
やや当てはまる 3点
よく当てはまる 4点
【各因子の採点方法】
各因子は3問で構成されています。
各因子の合計点は 0〜12点 となります。
高 10〜12点 強い
中 7〜9点 中程度
低 0〜6点 少ない
【全体スコア評価(参考)】
全30問の合計点は 0〜120点 となります。
96〜120点 認知のゆがみ 非常に強い
71〜95点 認知のゆがみ やや強い
46〜70点 認知の歪み 少しあり
0〜45点 認知の歪み 少ない
診断結果について、それぞれのタイプごとに特徴や注意点を1,000文字前後で評価しました。文章については、先行研究や作成者の臨床経験を基に作成しました。
当診断は因子構造及び信頼性・妥当性をチェックしたものではありません。あくまで専門家としての検討を加えたものです。統計的な根拠が希薄で、研究に耐えられるレベルの尺度ではないことをご了承ください
1. Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders.
2. Burns, D. D. (1980). Feeling Good: The New Mood Therapy.*
3. Özdel, K. et al. (2014). *Cognitive Distortions Scale (CDS): Reliability and Validity Study.PLoS ONE, 9*(8): e105956.
4. 東 洋(1996)「認知の歪み尺度の作成」追手門学院大学心理学研究.